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名古屋松坂屋の近くの橋本美術に会員の長江重和さんの個展を観に行きました。今回は、あかり をテーマとした作品がメインで、壁掛けタイプのものと薄層と名づけられた卓上タイプがあります。壁掛けは、磁器に開けられたスリットや穴のパターンに面白さがあり、スリットは焼いた上で最終的な形となることを狙っているところが長江さんらしいと感じました。薄層は、容器から絞り出した泥漿を薄く重ねて網目状にしたものですが、この日のギャラリートークの中で長江さんが実際の石膏型と容器で分かり易く説明してくださり、大変参考になりました。

薄層のあかりの作り方の説明

[薄層のあかりの作り方の説明]

ギャラリートークでは、作品の説明の他にご自身の仕事への関わりについて話して下さいました。初めは、家業の安価なものを作る鋳込みの仕事に反発し、それとは正反対の轆轤やタタラで作る一般的な陶芸から出発したものの、ある作品がキッカケで鋳込みの可能性に気づいてからは家業が宝の山だと思うようになったこと。それからは、様々な機会を通じて鋳込みが世に認知されるような活動をされていることなどを語られました。

長江さんがネットで公開されている鋳込みの技法は実践的で詳しくて、鋳込みに関心を持つ人に大変参考になります。ご自身が持っているものを広く公開することで陶磁器の世界そのものを盛り上げようとされる姿勢に共感します。

 

 

長江さんの作品にはオブジェ的なものと器的なものがあるので、それらに対しての考え方や制作のアプローチに違いがあるのかどうかをお聞きしたところ、器で発見したことがオブジェに繋がることやその反対もありそうした意味で違いは無いが、作る時の意識は切り替わっているとのこと。ちなみにオブジェと呼ぶと、既にある言葉に縛られるので、ただ作品と呼びたいとのことだった。作品や釉薬の名前などについても既成の言葉でなくご自身の言葉で表現されるところにも長江さんの創造的な意識を感じました。

(本多)

2013.11.10