以前当会の代表を務められ(1995~2001)、本年3月9日に亡くなられた陶磁器デザイナー田尻誠さんを偲び、ここに当会の代表 栄木正敏及び会員 長江重和から追悼の言葉を送ります。
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「田尻 誠さん さようなら」 栄木正敏
田尻さんは、私の4つほど武蔵美の後輩にあたる。彼が同大学の助手をしていた時からのライバルであり、同じクラフトデザインの永いつきあいであった。
静岡の工業高校デザイン科を卒業し、銀座のデザイン事務所で仕事をしていたころ、クラフト陶磁器に目覚め、止むにやまれず、武蔵野美術大学を受験、大学ではフィンランドのアラビヤ社に留学した加藤達美先生に師事する。学生時代には知山陶苑、白山の製品に憧れたという。後に師の達美先生はとても高く彼の仕事を評価していたことを思い出す。
彼は単に美術品として観賞のみに終わらない、とても精緻、巧みなろくろ技による生活の中に生きるクラフトデザインを思考して、大きな成果を上げてきた。そして1990年の日本クラフト展グランプリの日本クラフト賞 柿釉による「くつろぎの器」に結実した。選考評「・・・・・・多様な現代の生活シーンも、やはり普段の時が圧倒的に多いのです。そんな中で、充分に使い切れるモノ、創造性も含めて日常の高い要求をみたす事の大切さを、今一度確認させてくれる作品」と書かれている。
彼が亡くなる数年前に非常勤講師であった愛知県立芸術大学の芸術資料館に上記の茶器セットや耐火鍋、鉢、皿類を永久コレクションに出来たことが私としては良かったなと思っている。
陶磁制作に加え、陶芸専門誌の連載著作、紋様表現、絵の巧さなど多面的な才能の持ち主である田尻誠さんは2013年3月9日ご逝去された。短くも充実したものつくり人生であったと思う。
田尻誠さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
「田尻さんのこと」 長江重和
田尻さんの事、知人から聞いてびっくりしていました。私の仕事場を作り直す時に田尻さんの仕事場を移動するのが重なり、道具やロクロなどたくさん頂いたり、購入したりしました。あとで聞いたのですが、現金を手にするとついついお酒を買ってのんでしまうようで、申し訳なかったなと思いました。
自分自身の作品づくりをあそこまでやった人が李さんの仕事のお手伝いをされる事はたいへんだと思いましたが、とても立派だなとつくづく思いました。田尻さんの道具を使い、作品づくりを進めたいと思っています。
2013.09.04