なごり雪が降り、冬の装いで出かけた展覧会『ひねって・焼いて・陶 Life 本多潔・本多淳子』展。会場の入り口で大壺に生けられた、春色のオンシジウムで一気に外の寒さが吹き飛んだ。
本多潔氏(以後:本多さん)本多淳子氏(以後:奥様)ご夫妻の2人展。本多さんは、自動車デザインに長く携わっていたので、その作品は「工業デザイン的」である。一方、奥様はDMのご紹介文に書かれているように「当意即妙」な作風である。つまり、お2人の作風は相反している。こういった展示の場合、そのギャップが面白かったり、はたまた、そこらのギャップがしっくりこない場合は、同じ会場で別の展示をしているように「分離」してしまいがちである。しかしながら、今回の展示は、とても心地よい「春のリズム」を奏でている。
奥様の練り込み作品(違う色の粘土を組み合わせ作る技法)は、その制作秘話をお2人にお聞きした。本多さんがストライプの練り込み技法の作品を制作する傍ら、その行程で余った粘土で奥様がラフに制作した作品とのこと。本多さんのストライプの作品は納得の行く状態では、でき上がらなかったそう。そんな制作秘話を聞き、その心地よい春のリズムに納得した。
本多さんは、前に述べた通り「工業デザイン的」なので、異なる素材を組み込むことが巧妙である。時計のムーブメント、照明装置などにそれを見る事ができる。陶磁器というのは、収縮がその粘土によって大きく違うため、制作前の収縮率の計算や、試作は当然必要となる。また、照明は、磁器とは違い陶器に透光性はない為、どのように光を通すのか、直接的なのか、間接的なのかと「光のデザイン」も必要となる。そして、主流となってきたLEDの特性も考慮した作品となっており、同じく、照明を手がける自分にとってとても勉強になった。
まだまだ見所満載である。少し珍しいところでは、奥様の手がけたフォトフレームである。陶板の作品は目にすることはあれど、額縁は珍しい。その裏のスタンドは木製だが、これも手作りなのだ。この作品に至っても、ご夫婦での試行錯誤がありでき上がったもの。また、木工とのコラボレーションでは、本多さんのお母様の手がけた木彫作品とのコラボも必見だ。
今回の展示は、ご夫婦で右半分、左半分にだいたい分けられて展示されているが、私個人の意見としては分けずに展示されても面白いのかなと思った。また、本多さんは道具作りの名人である。ご自身のブログではその道具の公開もされているのだが、とても面白いので、その道具と共に展示されるのもいいなと思った。とはいえ、初めての2人展とは感じさせない、見応えのある展示で、今後の展開もとても楽しみだ。 (酒井 崇全)
2015.03.13
東京ミッドタウン・デザインハブ特別展
第54回日本クラフト展
-DNAにひびくデザイン-
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2015年1月10日(土)~2015年1月18日(日)
2015.01.04